廊下の、もう遠くの方を歩いている西巴を呼び止める。



「西巴……!!」



そうすれば、西巴は足を止めて。



「追いかけてくるとは思わなかった。……何?」



振り返った西巴の顔には、面倒くさいと書いてあった。





「さっきの、どういう事かちゃんと説明してって……!」

「だから、そのままだよ。烏丸さんの下手な嘘に騙されてる事が滑稽で笑った。」




これでいい?じゃあ、とまた歩き始める西巴の肩を掴んで引き止める。


これで良くないんだよ!

このままどういう事か分からないままにしておくと、気持ち悪くて眠れなさそうだ。




「烏丸さんの下手な嘘って何。」


「…………橘は、烏丸さんが強いと思う?」


「そりゃあ、強いんじゃない?」


「彼女が強く見えたのなら、そう本人に言ってあげるといい。きっと喜ぶよ。それじゃあ。」


「もっと具体的的に説明してくれないかな?!」



俺の理解力が足りないのか、西巴の言ってることが抽象的的すぎるのか。



会話をしてるはずなんだけど会話にならないもどかしさに、俺は苛立っていた。


そんな時、バシャーンッ!!と水の流れる音と耳につく高い声の笑い声が窓の外から聞こえてきて。



「「あ。」」



西巴と俺の声が重なった。

きっとその声は、間抜けだったに違いない。



驚いたんだ。



……花壇の辺りで水を被った烏丸さんと、向こう側の窓からバケツに入った水をこぼす女子達が窓越しに目に入ったから。



いくら鈍い烏丸さんとは言え、ここまでされれば流石に悪意を感じるだろうし、これは女子達もやりすぎだ。


もう黙って見てられない。





俺は烏丸さんのいるところを目掛けて走りだした。