いつも何も喋らない西巴が、笑っている。


声を出して……。





その時教室にいたクラスメイト達は皆驚いて目を見張ってこっちを見ていた。




勿論俺も驚いている。

そもそも笑わせる事なんて、言ってないのに。





初めてみた西巴の笑顔は、なんだか冷たくて、怖い感じがした。




そうだ。烏丸さんの笑顔を花だとすれば、西巴の笑顔は黒い蝶。

綺麗なんだけど、凄く不気味なんだ。






「……何がそんなに可笑しいの?」


「ふふっ……あははっ、可笑しいに決まってるでしょ!大根女優が、主演女優賞を取るようなものだよ?」





……大根女優……?

西巴が何を言いたいのかが、全然分からない。




どういう事?と聞けば、分からないならいいよと返ってきて。




「へぇ……。他からはそんな風に思われてるんだ。それならあの子は本望だね。教えてあげないと。」






それだけ言うと、西巴はそのまま教室を出て行った。





本当に訳が分からない。

烏丸さんの話をしていたつもりだったのに、何故か女優の話を出して。





────《教えてあげないと》


西巴は、誰に何を教えに行ったんだ?






「ちょっと待って……!」



何がなんだかさっぱり分からなかったけど、俺は教室を飛び出して西巴の後を追いかけた。