声が聞こえた方を見ると、黒いバイクにまたがって、頬ずえをしながらこっちを見ている男の姿があった。



バイクも、服も靴も、それから髪も黒で、夜に溶け込んでしまいそう、なんていうのが彼の第一印象となった。



もっとも──夜を感じさせたのは、服装じゃなくて、纏ってるオーラのせいだと思うけど。




バイクを降りて、歩いてくる彼は端整な顔立ちをしていて、吉良の横に並ぶ姿は、まるで一枚の絵画みたいだった。






「突然走り出したと思えば……それ、お前の女か?」


「……その辺にいた奴。寄るんじゃねー、夜白。」


「いや、お前、女遊びしないだろうが。俺ぁお前が男が好きだったって聞いても驚かねぇよ。」





クククッと面白そうに笑うその男から私をかばうように吉良は私を抱きしめた。


顔を胸にうずめる形になって、ほんの少し苦しい。






もしかして───吉良は、この男に私の事を秘密にしたいのかもしれない。


だって、妹だ、とでも……従兄妹だとでも、いくらだって言えるもの。

顔を隠すように抱きしめられてるし、




もしかしたら、守ってもらってるのかもしれない。






西凛か?と言う声が聞こえて、


「顔見せろぉ、吉良の女。」


髪をぐいっと引っ張られる。




あれ……これ、イナバウアーはたまたエクソシスト。


ちょっと頭に血が上りそう。