「あー。西凛見っけ。」




ぎゃははは、と思わず顔を顰めたくなるような男の声が聞こえる。



西凛ということは、明らかに私達を見て言った訳で。




振り向くと、にやにやと笑ってる高校生達。


しかも手にはバット。


あの制服……東榮?……って事は、東か。



東は一番荒れてるから、正直近寄りたくもない

でも制服を覚えていたのは、学ランって言う王道が東榮にしかなかったから。



ブレザーよりも学ラン萌えだからね。




「女の子もいるー。って事はこれが、カラスちゃん?」


「まぁいいじゃん。その子だろうとなかろうと、どっちにしろ頂くんだし。」


「顔に傷は付けるなよ。総長に渡せなくなるからな。」







カラスちゃんって……私の名前なのか?



ていうか……あれ、これってあれだよね?!



俗にいうピンチだよね……?!




高橋君を見るとやはり苦しい表情だ。


「5人……まじかよ……。」


「高橋君……。」


「烏丸さん……その路地思いっきり向こうまで走って。絶対通さないから。」



大丈夫なのか聞くと、怖いことは起きないよ、と高橋君は言った。



違うよ高橋君。

高橋君が大丈夫なのかが心配なんだよ。

こんな時にまで、人の心配しないでいいんだ。




なのに……ヤンキーなのに。





ポンと背中を押されて、その反動に乗せて、私は駆け出す。






「女が逃げたぞ!」


「総長の大切な女。みすみす渡すかよ!」



高橋君の声が、遠くで聞こえた。