「み、美心ちゃん?」

「千奈は私のだもん、神斗には渡さない」

「おい、それは聞き捨てならないな」

神斗君も立ち上がると、私の腕を掴んできた。

「離しなさいよ」

「お前が離せ」

二人の間で火花が散る。

「ほ、ほんとに昔から仲が悪いんだから…」

二人の仲が崩れたのは、私のせいでもある。

──神隠しにあったあの日──

森の中に居た私を最初に見つけたのは、私のお父さんだった。

「せ、千奈さん!!」

「あ!お父さん」

「良かった、無事だったんですね」

「うん」

お父さんが言うには、あの時急に姿を消した私を、神斗君と美心ちゃんが必死になって探してくれていたんだって。

「千奈ちゃーん!!!」

私が二人の元へと行った時、美心ちゃんは泣きながら私に抱きついてきた。

「千奈!!!お前大丈夫だよな」

神斗君も、私に色々と質問してきた。

「うん、大丈夫だよ」

これ以上二人に心配かけないように、笑顔でそう言った。