いかにも病院といった雰囲気の真っ白な廊下。壁に沿って取り付けられた手すりの木目が辛うじて色を添えるが、長時間居ると気が変になりそうなのは変わらない。
いくら護衛とは言えずっと病室に居ては気まずいし、ゆっくり静養も出来ないだろうと、鷺沼は晴流の病室に程近い廊下の長椅子に腰掛けていた。
──後30分で交代、か。
正直、この薬品臭い空間でじっとしているのはキツい。早く現場に戻りたい。それが本音だった。
と、その時。
──コツン、コツン…
医師や看護士とは違う靴音が近づいてくる。ハッとして顔を上げると、そこに居たのは。
「!君は…」
「先日はどうも。」
丁寧に会釈してきたのは現在疑わしいとされている人物の一人、峰村優真だった。
「…どうかしたのかい?」
予想外の来訪者。鷺沼は立ち上がりやや警戒する。
「あの、晴流くんのお見舞いをと思ったんですが…ダメでしょうか?」
そう言う優真の手にはパステルカラーで統一された小さな花籠。
──お見舞い、か。
疑わしいが犯人と決まった訳ではない。面会謝絶でもないし、立ち会う分には問題ないだろう。
「…いや、大丈夫だよ。」