出来ることならばもう二度と訪れたくはなかった病院。まさかたった一年後に足を運ぶことになるだなんて、誰が想像しただろう。


「──おかあさん…っ」


 堅く閉ざされた扉の前の長椅子に咲季の姿を見つけ、雪姫と琥太郎は即座に駆け寄った。


「ねぇっ、どういうこと!?どうして…っ」


 ここに来るまでの間ずっと混乱する頭に鞭打って思考を巡らせたが、訳が分からない。


 "刺された"とはつまり、あの時のような自然発生的な事故ではない。誰かが故意に晴流を襲ったということ。


──いったい誰がこんな…!


 咲季は雪姫の気持ちを痛い程感じ取っていたが、ゆっくりと首を横に振った。


「わたしもついさっき来たところよ。その時にはもう中に運び込まれていて…」


 視線の先を辿る。扉の上に備え付けられた手術中のランプは未だ煌々と灯ったままだ。


「…今は信じて待ちましょう。必死に生きようとする、あの子の意志を。」


 それからどのくらいの時間が過ぎていっただろう。


 遅れて奈々や晴流の担任だという灰原(カイハラ)も合流し、皆一様に無事を祈っていた。