─8月25日─
熱い日射しが降り注ぎ、爽やかな風が吹き抜ける午後。広い体育館の中は大勢の人達の声援と熱気に満ち溢れている。夏の大気をも凌駕しそうな程に沸き立つそれは、今まさに最高潮に達しようとしていた。
「「行けーっ!」」
どこからともなく飛んできた歓声。それに後押しされるように、雪姫(ユキ)は一気に前に出た。
自身の鼓動、ボールの弾む音、靴底が擦れるキュッという音。全てが融け合って身体を突き動かしているようで、何だかいつもよりも軽く速く動けている気がした。
──女子バスケットボール、夏の全国大会。その決勝戦。
冬には受験で手一杯になる中学三年生としては、これが出場出来る最後の大会だ。
そんな中残り数秒を託された重圧たるや並大抵のものではないはずなのに。雪姫はそんなものを微塵も感じさせない、しなやかな動きで敵を抜いていく。
チームが一丸となって切り開いてくれた道を駆ける彼女の脳裏に在ったのはただ一つ、『約束を守る』という強い意志だけだったから。
残り5秒。何としてでも阻止しようと正面に回り込む敵。瞬間、雪姫はあえて一歩後退し、そのまま流れるようにスリーポイントラインからボールを放った。
「「あっ!!」」
確かな手応えを残し放物線を描いた朱いボール。それは全員の視線を集めながら、まるで吸い寄せられるようにリングとネットの中を抜けていく。そして──
熱い日射しが降り注ぎ、爽やかな風が吹き抜ける午後。広い体育館の中は大勢の人達の声援と熱気に満ち溢れている。夏の大気をも凌駕しそうな程に沸き立つそれは、今まさに最高潮に達しようとしていた。
「「行けーっ!」」
どこからともなく飛んできた歓声。それに後押しされるように、雪姫(ユキ)は一気に前に出た。
自身の鼓動、ボールの弾む音、靴底が擦れるキュッという音。全てが融け合って身体を突き動かしているようで、何だかいつもよりも軽く速く動けている気がした。
──女子バスケットボール、夏の全国大会。その決勝戦。
冬には受験で手一杯になる中学三年生としては、これが出場出来る最後の大会だ。
そんな中残り数秒を託された重圧たるや並大抵のものではないはずなのに。雪姫はそんなものを微塵も感じさせない、しなやかな動きで敵を抜いていく。
チームが一丸となって切り開いてくれた道を駆ける彼女の脳裏に在ったのはただ一つ、『約束を守る』という強い意志だけだったから。
残り5秒。何としてでも阻止しようと正面に回り込む敵。瞬間、雪姫はあえて一歩後退し、そのまま流れるようにスリーポイントラインからボールを放った。
「「あっ!!」」
確かな手応えを残し放物線を描いた朱いボール。それは全員の視線を集めながら、まるで吸い寄せられるようにリングとネットの中を抜けていく。そして──