湊人は勉強も運動も得意で、その明るい性格も含め、いつもクラスの中心に居るような子だった。
それに対し琥太郎は休み時間も一人で過ごすことが多い。普通ならあまり関わることはない、対極の存在だろう。
けれど真逆だからこそ通じ合うものもあるらしい。
『コタロー、学校行こー。』
『うん!』
毎日登下校を共にしたり、班を作る時はいつも一緒になったり。季節が夏に移り変わる頃には二人は仲の良い友達になっていた。"親友"と言っても過言ではない程に。
その証拠に湊人は琥太郎のことを名前で呼んでいた。彼は他人を名字でしか呼ばない。名前で呼ぶのは極親しい者だけなのだ。
──誰かに"特別"だと思われるのは、やっぱり嬉しくて…。
秋が来て、冬が来て、少しずつだが湊人は自分のことや本音を教えてくれるようになった。
父親が厳しい人だから勉強は無理して頑張っているのだということ。クラスで孤立しないように大勢でつるんでいるが、本当は一人静かに過ごす方が好きなのだということ。
その話を聞いて納得した。湊人と自分がこんなにも近づけた理由。それはきっとお互いの持つものを"羨ましい"と感じていたからだ…と。