慌てて辺りを見回す。休憩室のようなこの簡素な部屋には他に誰も居らず、ひとまずホッと安堵の息を吐いた。


「茨木くんは用事があるから、って帰ったよ。」


「そう…」


「…ねぇ、琥太郎。琥太郎が倒れたのってやっぱり、彼が原因?」


 的を射た雪姫の言葉に一瞬ドキリとした。思い出すだけで肌が粟立つ、過去の記憶。


「………うん。」


 しかし、話すと決めたから。話さなくてはいけないから。琥太郎はゆっくりと頷く。


「友達…じゃないの?」


「友達だったよ。…ううん。そう思ってたのは、僕だけだったのかもしれないけど…」















 琥太郎は昔、ここよりももう少し栄えている隣街に住んでいた。


 そこの小学校は人数が多い為毎年クラス替えがあり、琥太郎と湊人が同じクラスになったのは3年生の時。


『一緒のクラスになんの初めてだよね。よろしくー!』


 明るく気さくに、湊人はそう話し掛けてくれた。


『…うんっ、よろしくねぇ。』


 少し人見知りの気がある琥太郎も彼とはすぐに打ち解けることが出来、新しいクラスに対する不安もこの時をきっかけに大分和らいだものだった。