「萌菜先輩。どうやったら、先輩は
俺のものになってくれるの?」
思いもよらない高橋くんの問いかけに、
持ち上げた腰が途中で止まってしまった。
ゆっくりと、高橋くんのほうへと視線を向けると、バチっと交わった視線。
いつもは、すぐにそらしてしまうのに
なぜか今は、高橋くんの真剣な瞳に
捕まってしまって、逃げられない。
「…えっ?」
少し掠れた声が、部屋の中にスッと
消えていく。
さっきまでカチカチと聞こえていたはずの
時計の音が聞こえなくて、2人だけの
世界に入ってしまったような、
そんな感じがした。
「ねえ。早く俺のものになってよ。先輩」
ドキドキ、ドクドク
とハンパない速さで鳴り出す心臓。
「あ、たしは……」
その心臓の音に急かされるように、
何かを口にしようと、口を開いたとき。
ガチャっ
「高橋、飯田。
早く支度して、飯食え」
部長、金子が部屋に入ってきて
あたしの言葉は、宙に浮いたままに
なってしまった。