もしかして、私が引っ込んだままなかなか出てこないから、魁さんかマーク兄さんあたりがホテルの人に様子を見てくるようにと頼んでくれたのかもしれない。

あぁ、天の助け……。

ゆっくりと視線を動かして、Rest roomの中にいる人物を一人一人見回していた女性は


「マリア・ウィンザー様でいらっしゃいますか?」


私に目を留めると、確認するように尋ねてくる。

この場を早く立ち去りたくて、こくこくと勢いよく頷けば


「申し訳御座いませんが、お連れの結城様が通路でお待ちになっておりますので、一緒にお越し頂けますでしょうか?」


にこりと優しい笑みを浮かべてドアの出口へと促してくれる女性。

はい、喜んで! 来るなと言われても、今すぐ行きます!

良かった。
これで、この場から逃げられる……そう思いながら、そそくさと歩き出した私に



「───待っているわ」


追い討ちをかけるような言葉を口にした暁さん。

その声が耳に届いたのとドアが閉まったのは、ほぼ同時だった。