「───…っ……」


私が、魁さんの婚約者じゃいられなくなる……。

そう口にした彼女の唇は、とても嬉しそうに歪んでいて。


「3日後に会えるのを、楽しみにしているわ」


暁さんの言葉に、段々と血の気が失せていっているであろう私の顔を覗き込むと


「その時に、ゆっくり話をしましょう?」


愉快毛に、その瞳を細めた。

既に彼女の中では、メモに書かれた場所に私が行く事になっているけれど、それに「分かりました」と安易に返事はできない。

思わず「そんなの、無理です!」と、喉元まで出掛かった言葉を飲み込んで、首を横に振った時だった。

コンコン…と、緊張した空間にノックの音が響く。

どうやら美代さんが気にしていた、こっちに向かって来ていた誰かみたいなのだけど……

Rest roomって、ノックするものだっけ?

そんなどうでもいいことを頭に浮かべながら、ノックされたドアに視線を向ければ


「失礼致します。こちらに、マリア・ウィンザー様はいらっしゃいますか?」


控えめに開けられたドアから中に入ってきたのは、このホテルの制服を着た女性だった。