「やっと見つけたと思ったのに、肝心なところでっ!!」


そう言って悔しそうに舌打ちをした暁さんは、渋々ながらも私の肩から手を離すと、持っていたバッグから手帳とペンを取り出して急いで何かを書き始めた。

今なら逃げられる……かも?

一瞬そんな考えが頭を過ったけれど、誰かがこっちに向かって来ていると言うのならば、下手な事はしてこないはず……。

それに、ロビーには魁さんやマーク兄さん達もいる。

だったら無理に逃げ出さずに、人が入って来たタイミングで出て行けばいい。

そう思い直した私は、出口の扉が開くのをじっと待つことにした。


数秒後、手帳から1ページだけを破くと私の手にくしゃりと握らせた暁さんは


「3日後。紙に書いてある場所に必ず来て」


念を押すように、私の手を包む手に力を込める。


「……………………」


もちろん、それに返事ができるはずもなく……。

相変わらず黙り込んでいる私に、彼女の口からは凍りつくような言葉が続いた。


「来なかったら……あんたの秘密をネットにバラ撒いてやる」


私の秘密……?


「そうなったら、あんたは結城さんの婚約者じゃいられなくなる」