みなとみらいで名前を呼ばれた、あの時。
田中さんと交わした会話といったら、私がマリア・ウィンザーなのかと聞いてきただけで。
まぁ、すぐに魁さん達が来てしまったから、彼が声を掛けてきた意図も分からなかったし、会話を続けることも不可能だったんだけど。
実際に、それ以降は何事もなく過ごしていて、彼を見かけることもない。
でも、あの人は……
暁さんは、違った。
「ずっと、探していたのよ」
やっと私を見つけたと言った彼女の瞳は、狙った獲物を捕らえた捕食者のようにギラギラとしているのに
「ねぇ、マリアさん?」
「……………………」
こてんと首を傾げて私の名前を呼ぶその仕草は、学校でよく見る可愛らしい笑顔。
……でも。
続いて彼女の口から発せられた言葉は
「結城さんと、早く別れてよ」
「……っ……」
そのまま心に突き刺さりそうなほど鋭いものだった。