───カコーン……


遠くの方から聞こえてくる『鹿威し』の快い音が、静かな部屋に響く。


「─────と、いうことなのです……」


その音を聞きながら、話を終えた私はゆっくりと息を吐いた。

魁さんとの関係をある程度端折って話したけれど、それでも話すことが多すぎて喉がカラカラだ。



「……………………」


話し終わったのに、何も言ってくれない綾ちゃん。

いつまで経っても微動だにしない綾ちゃんを目視できなくて俯いた。



冬休み明けの今日。

綾ちゃんに魁さんのことを聞かれるのは分かりきっていたから、どこまで話していいのか分からない私は、事前に魁さんに相談していた。

もしかしたら、高校を卒業するまでは秘密にしておけって言われるかもしれない。

そう言われる覚悟もしていたのに……


「秘密にしておくつもりだったのか?」


「え?」


顔を顰めた魁さんからの返事は、想像とは違ったものだった。