「おはようございます」

 コートを脱いで、鞄をチェアに置く。コートのポケットから取り出したスマホの画面に不在着信の通知が残っていた。

「あれ?」

 響子との会話に夢中になっていたせいか、全く気がついてなかった。画面をタップすると、母の入院している病院の電話番号が表示された。

「……え?」

 呆然としていると、再び手のひらのスマホが振動する。画面に表示されたのは、やはり母の病院の名前だった。

「……もしもし、三谷ですが」

「良かった、つながった! 私ホスピス棟の川田です。三谷さん、お母さまが急変されました。急いで病院までお越し願えますか?」