「そうなのかもしれないね」

 胸に鋭い痛みが走った。

 自分から手放したはずの恋心が、こうして時折顔を出してはシクシクと痛み出す。

 上村と麻倉さんの噂は、あっと言う間に社内中に広まった。

 いつもなら騒ぎ立てる上村ファンの女の子たちも、できる女の見本みたいな麻倉さんを目にするとさすがに戦意喪失してしまうらしい。

 いつの間にか、二人は理想のカップルとして公認されていた。

「響子もすぐに仲間入りじゃない」

「そうですね。がんばろ!!」

 励ますように響子の肩を叩いて、エレベーターを降りた。