彼女の存在は、すっかり社内でも有名になっていた。

 女性でありながら、オアシス部のやり手営業たちを次々にやり込めるキャリアウーマン。

 そして、鉄壁の上村を落した唯一の女性。

「オアシス部って、こんなに早い時間から打ち合わせやってるんですか?」

「んー、どうだったかなあ。岩井田さんの予定には入ってなかったけど」

 彼女から視線を外してエレベーター乗り場へと急ぐ。今はまだ、彼女を見ると胸が痛んだ。

「麻倉さんも今日はデートなのかなあ。ヘアスタイル、素敵だった」

 上昇するエレベーターの中、響子に言われて気がついた。

 いつもは下ろしている麻倉さんの肩下までの髪が、今日は綺麗にアップされていた。