「それでそのプレゼント、三谷さんは誰にあげるんですか?」

 響子が目をキラキラさせて訊いてくる。私は苦笑いを零した。

「残念でした、プレゼントじゃないわ。これは母と食べるケーキなの」

 昨日の夜、一人で作ったクリスマスケーキ。母の好きなフルーツをふんだんに使ってある。

「えー、朝からケーキ買っちゃったんですか? 早く買わないと売り切れちゃうような有名店のケーキとか?」

「ん、まあね……」

 響子にも母のことは話していない。もしもという時のために、オアシス部の部長には話したが、下手に話して心配をかけるのが嫌で、結局会社の誰にも言ってなかった。

 母の病状は依然芳しくない。ほとんどものを口にしなくなっているし、私が訪ねても寝ていることの方が多い。

 覚悟だけはしていてくださいと、十二月に入ってすぐの検査の後、担当の医師からも言われていた。