今夜だけでも、あなたが私を求めてくれるなら。

 今度は、どちらともなく唇を合わせた。

 上村の大きな手のひらを探し当て、自分から指を絡める。

 このまま、繋いだ手が離れなければいいのに。


 どうか、後悔をしないで。

 求めたのは私の方だと、覚えておいて。

 あなたに触れることができるのは、きっとこれが最後。

 そう思えば思うほど、体は熱を帯びていく。

 互いの熱が溶け合い、混ざり合い境界が曖昧になっていく。

 体は、こんなにも簡単なのに、たぶん私たちの心は永遠に交わらない。


 謝らないでいて欲しかったのに。

『香奈……ごめん』

 眠りに落ちる瞬間、上村の声を聞いた気がした。