「ひどいな、先輩。……俺からは逃げるなんて」

 私の抵抗に逆上したのか、上村は押さえつける手の力をさらに強めた。

「やっ、上村やめ……」

 ――拒否の言葉は、上村の唇が飲み込んでしまった。

 舌を絡め取られ、息を継ぐことができない。足をバタつかせても、上村はやめてくれない。

 酸素を求めて無意識に逸らす唇も、またすぐに上村が塞いでしまう。

 両手の圧が解かれても、朦朧とした意識では、もう彼を押しのけることもできなかった。

 上村の手がスカートからブラウスを引きずり出し、下着ごと上にたくし上げる。

 肌に触れる唇の感触に、ふいに意識が呼び戻された。


 ――何が上村を、苦しめてるの?

 力の抜けた手で上村の頭を抱き寄せ、くせのある髪をそっと指で梳いた。

「何が……あったの?」

 私の体から離れ、顔を上げた上村と目が合う。その表情は、苦しげに歪んでいた。