「上村、何かあったの?」

 一歩、二歩と距離を詰めて、ようやく見えた上村の表情に息を呑んだ。

「おかえり、先輩」

 伸びてきた手が、私の腕を掴む。力の強さに顔を歪めた。

「痛いよ、離して」

「……岩井田さんと、今までどこに行ってたの?」

「は?」

 私が岩井田さんと一緒だったことを、どうして上村が知っているのだろう。私が岩井田さんの車から降りたところをベランダから見てたんだろうか?

「ドライブは楽しかった?」

「なっ……」

 言い返す間もなかった。

 そのままソファに打ち付けられ、上村に体を押さえ込まれた。

 覆いかぶさってきた上村に両の手を頭の上で押さえ付けられ、身動きが取れない。

 首筋を這うぬるい感触に驚いて、逃れるように体を引いた。