自分の部屋のドアの前に立ち鍵を差し込んで、おかしいことに気がついた。

 鍵が開いている。……部屋に誰かいる?

 細く開けたドアの隙間から中を覗くと、見覚えのある男性用の革靴が目に入った。

 そんな、まさか。でもあれは……

 息を呑み、音を立てないようにして玄関の中に入り、明かりの消えた廊下を歩く。

 リビングと廊下を隔てるガラスのドア越しに、ソファに座る上村の姿が見えた。

 ――上村、鍵捨ててなかったんだ。

「……上村、どうしてここにいるの?」

 上村は私の方を振り返ると、おもむろに立ち上がった。

 彼の大きな背中を間接照明の明かりが照らす。私を見下ろす上村の顔はちょうど影になり、どんな表情をしているのかわからない。

 何故、私の部屋に上村がいるのか。そのわけを知りたくて、私は彼に近づいた。