岩井田さんの言葉の一つひとつが、体に心に染み込んでいく。

「嬉しいです、本当に。ずっと代わりのいない人間になりたかった。でも、もう少しだけ待ってもらえませんか。もう少し、自分の気持ちに踏ん切りがつくまで……」

 彼の話を受けるには、私にはきちんと諦めなくてはならないものがある。

「……わかりました。君のためなら待ちますよ、いくらでも。でも、それだけじゃなくて……」

「……岩井田さん?」


 私を見つめる岩井田さんの瞳が、違う色を纏う。

「三谷さん、本当にわかってる? 僕がずっと君に言ってきたことの意味が」

「えっ……」

 突然岩井田さんに腕を引かれ、二人の距離がなくなった。

 気が付いたときには、岩井田さんの腕の中にいた。差していた傘が地面に転がり、真っ白な雪が覆いを無くした二人の髪に肩に降り積もっていく。

 岩井田さんの腕の中でくぐもった声を聞きながら、そのさまをジッと見ていた。