バスに乗ると、学生は数人しかおらず、ほとんどはサラリーマンだった。

「いやだな〜…オッサン臭ッッ」

…という言葉を胸に秘め、息を止めて空いている席がないかどうか辺りを見回した。
すると…




奏と同じセーラー服を着た女子生徒が、一人座っていた。胸には一学年のカラーの、青いスカーフ…
奏は駆け足で彼女のところへ行った。


「隣…あいてるかな!?」

彼女はこちらを向くと一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに奏に笑顔を返した。

「うん、どうぞ」

奏はお得意の笑顔で彼女の隣に腰掛けた。

「ありがとー!一年生だよね?名前なんていうの?」

彼女は口角だけあげる笑いをしたあと、

「青柳梓(アオヤギアズサ)」

とだけ答えた。