私にはとっても仲の良い友達がいる。その子は頭が良くて、美人で、背が高くて、スポーツができて、人望が厚くて、誰にでも優しい。そんなパーフェクトな友達を持つと、なんだか自分がみじめに思えてくる。その子の名前は、天音美歩。名前も私なんかよりずっとカッコイイのが悔しい。
 でも、美歩は私によくこんなことを言ってくる。「直海はいいなぁ、可愛くて」それはこっちのセリフだ。と、いつも心の奥底では思っている。けど、一応ありがとうとだけは言っている。なんで美歩は、私なんかのこと可愛いだなんて思うんだろう。

 私は不覚にも、旬君のメアドを知らなかった。ので、今度いつ会える?という質問ですらできなかったのである。いつもは、高校が終わった後に友達と出かけるのだが、なぜかの日は友達がみんな忙しいらしく、一人でいるのもつまらないから帰ろうと、家に向かっていた。
 家の前まで来て、見かけない車があることに気がついた。お客さんでも来ているのだろうか。
「ただいまぁ~」
「おかえり!ちょうど良かった、今ね旬君来てくれてるのよ♪」
「え?!」
「おかえり!直海ちゃん」
「旬君!!」
 私は初めて、早く帰って来てよかったと思った。
「連絡先知らないから、ずっと困ってたの。良かったぁ、私ちょうど旬君に聞きたいことがあったの」
「何?」
「前にも聞いたけど、どうして旬君はそんなにバイトしなくちゃいけないの?それに、苗字も変わってるし…。私じゃ頼りないから?だから教えてくれないんだ」
「そうゆう意味で今まで教えなかったわけじゃない。ただ、心配かけたくなかったから」
「逆に教えてもらえないほうが心配だよ」
「ごめん、今は言えない。でも、いつか必ず教えるから。それまで待ってて」
「……うん、分かった」
「ごめん、ありがとう…もう、バイト行かなくちゃ」
「そっかぁ、ごめんね時間取らせちゃって」
「大丈夫!じゃ、また来るよ。バイバイ!」
「うん、バイバイ!」
 あ!またメアド聞けなかった…。