思い出すまで待ってると言われても、本当に分からなくては事の進みようがない気がする。久藤なんて苗字聞いたことがない。ただ、旬という名前だけは聞き覚えがあった。
 それは、私の幼馴染の旬君である。
 私が保育園の時に旬君はどこかに引っ越してしまった。それからずっと会っていない。どこにいるかも分からない。
 久藤さんが旬君だとしたら……いや、ありえない。旬君は私と同い年だし、久藤さんは大学生だし。そんなことあるわけがないのだ。
 
 ん?誰かが私を呼んでる。だ…れ?
「おはよう。直海ちゃん」
「…おはようございます」
 朝目が覚めると、目の前には久遠さんがいた。
「なんか、うなされてたよ?」
「…あの、久遠さん」
「ん?」
「久遠さんって、もしかして……旬君?」
「…やっと思い出したか」
「え?でも、旬君は私と同い年なはずじゃ……」
「それは、勘違いだよ。俺はもともと直海ちゃんより2歳年上だよ」
「え!?」
 旬君はある日突然、私の目の前から姿を消したことを教えてはくれなかった。それに、なんで苗字が違うのと聞いても口を閉ざしたままだった。
 でもまさか、久遠さんがあの旬君だったなんて。随分大人っぽくなったなぁ。
 あのころの旬君はとってもかわいくて、私と身長がそれほど変わらなかった。いっつも一緒に遊んだり、いたずらしたりしいた。なんだか懐かしくて涙がこぼれた。