あの日からぱったりと、蒼井は保健室に来なくなった。
初めはたまたまだと思ってたが、1ヶ月が過ぎ、冬休みが始まっても彼女は表れなかった。
「最近元気ないわねぇ、橋村先生。」
水戸先生に言われてはっと顔を上げた俺は、ははは、と乾いた笑いをこぼした。
…そんなにわかりやすいだろうか。
「失恋でもしたの?
明日はクリスマスだというのに。」
水戸先生は若い頃同僚だった男性と結婚したらしく、今でも指輪を見つめて幸せそうに目を細める。
まだ25の俺にはもちろんそんな相手はいない。
いや。
欲しても手に入らないし、目の前からも消えてしまった。