「…え?」
聞き返しちゃいけない、とは思っていた。だけど…信じられなかった。信じたくなかった…。
「…えっと、こんな時に冗談言われても…。」
「ははっ、ごめんな。…冗談じゃねぇんだ。俺も親父にそう言われた時には信じてなかったんだけどな。どうももう取り返しつかねぇっぽくてよ。」
「…そんな…。」
泣こうとは思っていない。ただ、自然に涙が零れ始める。
「くっそ…手術は全くの無駄だったって事か…?」
「…ごめんね?」
「何でお前が謝るんだ?お前は何も悪くねぇ。」
「いや…あたしが手術しなよなんて言わなければ…もっと長く生きれたのに…!」
「バカ言うなって。どうせ何もしなくても死ぬんだから。戦った結果死ぬなら俺は後悔してねぇ。…泣くな、俺は絵里子の笑顔が好きなんだから。」
透はそう言ってあたしの涙を拭ってくれた。
「今笑えとか無理だよー…。」
「ははっ、まぁそうかもしんねぇわな。でも俺、退院するんだぜ?人生最後を存分に楽しむために。学校にも行くし絵里子とデートだってしてぇ。だからさ…俺が死ぬかもしんねぇって事忘れて笑っててくんねぇ?」
涙を拭いながら頬を撫でる透は穏やかに笑った。…応えなきゃ。透の頼みだもの。
「…分かった。透が毎日楽しいと思える様に過ごす。」
「おう、サンキュー。」
透の顔は嬉しそうだった。…強いなぁ。もうすぐ死んじゃうかもしれないって言うのにすごく落ち着いている。だけどあたしは知っている。余命とは医者の告げる実に曖昧な宣告である事を。