「情けねぇ…こんな所絵里子に見せる事になるなんてな。花奏に見せるなんてとんでもねぇわ。」
「花奏だって会いたいんじゃない?どうして来ちゃダメって言ったのさ!」
「ずっと一緒にいるからよ、俺の弱った姿は見て欲しくねぇんだ。本当は絵里子にも見せたくねぇけど…どうしても会いたかった。」
あたしの頭を撫でる透の手はやはり骨ばってゴツゴツとしていたが、しっかりと温もりがあった。
「俺な、今週末退院するんだ。」
「本当!?良かったじゃん!」
「あぁ。こんな暇でつまらねぇ所とはもうおさらばだ。」
透が退院する事を聞いてあたしは素直に嬉しかった。…だけどあたしは疑問に思う。どうして今日に至るまでこんなに具合が悪かったのにむしろ退院出来るのだろうか…普通なら退院予定日がどんどん延びるばかりじゃない?
「ははっ、またそうやって考え事するみたいな顔して。…どうして退院するかって?」
「うっ…うん。」
弱っているとは言え、あたしの思っている事を洞察する力は全く弱っていない。…嬉しいんだか悲しいんだか。
「花奏には連絡行ってるみたいなんだけどな、さすがにあいつの口からはお前には言えねぇか。」
透は少し悲しそうな顔をした。えっ…どうして?退院、嬉しくないの?透とあたしの間にしばらく沈黙が続く。

「…病気、再発しちまった。三ヶ月後、多分死ぬ。」