結局、病院の入り口に入った瞬間一人で行くなんて無理!と断言したあたしは看護師さんになだめられながら手を引かれつつ歩く。病院の中で迷子になる高校三年生って少し汚名になりそうだからさ…病院ごときで目的の病室に一人で行けない高校三年生も十分汚名確定か。もうあたし取り返しつかないって事か…。
「…はい、着いたよ。今から三十分間、ここに入れるのは貴女だけだから。終わったら出て来てちょうだい。」
「あっ、はい…分かりました。」
あたしは完全に閉め切られていた扉を開けた。本当にあたししか入れない様にしてあるんだ…なんだかドキドキする。
「…透?」
「おっ、来たか絵里子。久し振りだな。」
「うん…久し振り。」
部屋に待っていた透の姿は…十日前から五キロくらいは落ちてるんじゃないかってくらい痩せていた。ただでさえ細いのに、もっともっと細くなっていた。
「どうしちゃったのこんなに痩せて…。」
「ははっ、マトモに飯食えてねぇからさ。絵里子の細さには負けるけどな。」
「そんな事ないよ!明らかに透の方が痩せてるよ!」
透の腕をそっと掴んでみる。あたしの手ってかなり小さい方なんだけど…ちゃんと一周掴めてしまうほど腕は細くなっていた。ゴツゴツしていて本当に骨だけって感じ。