「…苦しく、なかったか?」
「いや…全然。」
「そっか、それなら良いんだ。」
三秒くらい触れてすぐ離してくれたから息苦しいとかは全然感じなかった。でも確かにしばらく続くと窒息死するかもしれない。…まだ唇に感触が残る。遂に…ファーストキス、経験しちゃった。
「絵里子のキス、初々しかったわ。随分力強く目瞑ってたんだな?」
「えっ!?ちょっ…まさか見てたの!?」
「いやー、あまりにも可愛くてさ、絵里子のキス顔。」
「ちょっ、サイテー!」
…やっぱり相変わらず透くんはどうしようもないお調子者だった。もしかしてそのギャップが良いのかな…ますます好きになっちゃいそう。
「んじゃ、俺ら恋人同士って事でさ。絵里子は俺の事『透』って呼ぼうぜ?」
「えっ!?なんか今日だけで随分色々してない!?」
「えー、だって今まで通りじゃつまんねぇじゃん。ね?俺の事呼び捨てして?」
「やだやだーっ…恥ずかしいよぉ…。」
こればかりは本当に恥ずかしかった。こんないやいや言ってちゃダメなのは分かってるんだけどさ…。
「一回呼んでみちゃったら案外普通だって。俺の事名前で呼べてるじゃん?後は『くん』取るだけだぜ?」
「でっ…でも…。」
「ほーら、言ってごらん?ご褒美あげるから。」
「ごっ…ご褒美…!」
子供なあたしはご褒美という言葉に弱い。ホント透くんったら意地悪なんだから!
「…頑張れ。絵里子にだったら出来る。」
…この際どうにでもなっちゃえ!一回呼んでみたら吹っ切れるかもしれない!