「…ワガママなお願いだって事は分かってんだよ。」
「うん…言ってみて?」
「…キス、しようぜ…。」
「えっ…きっ、キス!?」
ただでさえ抱き締められていた余韻に心臓がバクバクなのに、唐突のキスというワードにあたしの心拍数は更に上がる。
「初めてなのは知ってんだよ。…だからこそ今したい。今日俺達の新しい関係が始まるっていう特別な今日を一生忘れねぇ様に。」
透くんの眼差しから目が離せない。あまりに真っ直ぐで、真剣で…。
「…嫌なら言って?やめるから。…絵里子の事が好きだからこそ、俺は絵里子の嫌がる事はしねぇ。」
「…いいよ。しよう?初めてだからよく分かんないけど…。」
「…いいのか?無理してないか?」
「ううん。あたし…透くんと気持ちが通じ合った事を実感したいの。…お願い、キス…して?」
こんなお願いするなんて恥ずかしくて今すぐにでも穴を掘って潜りたいくらいだ。…だけどそう思っているのは本当だった。
「…サンキュー。好きだよ、絵里子。」
透くんの手はあたしの頬を包み込み、顔を近付けてくる。
「まっ、待って待って!…目、瞑ってもいい…?」
あまりに顔が近過ぎて恥ずかしいあたしは目を開けていられなくなり、ついつい透くんにそう聞いてしまう。
「ははっ、キスしたことないからわかんねぇか。目、瞑っていいんだぜ?」
「ホント…?じゃあ瞑るね…。」
「おう。」
あたしはゆっくり目を閉じた。そして…唇に柔らかい感触が走った。