星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



画廊を訪ねた夕方、
初顔合わせの、蒔田如月こと狭霧との対面を終える。

羚さんと俺、宝珠姉に暁鈴・美加と顔を連ねたスタジオで、
その少女は堂々と自分の歌を歌って見せた。


「有難うございます」


一曲歌い終わった後、彼女はゆっくりとお辞儀をする。


「なら後は羚。
 彼女にうちのボイトレの講師陣を紹介して。

 デビューまでにはまだまだ歌い方の癖を矯正していかないと、
 長くは持たないもの」


堂々と歌いこなしていたように思えた蒔田に対して、
宝珠姉の評価はおれとは違うらしく、
羚もそれに同意するように一礼して彼女をスタジオから連れ出した。


「暁鈴、アナタも今は羚と一緒に行動を。
 私が出掛ける時には声をかけるわ」


そう言って、シークレットサービスに別の仕事を言いつけると
ゆっくりと俺に宝珠姉が向き直った。



「託実、貴方は会長室へ」


言われるままに宝珠姉の後をついて、
最上階の会長室へと入る。


その部屋には、裕兄さんと高臣会長
そして実夜の姿が確認できた。



「託実、悪いけど香港でのこと
 たった今、報告させて貰ったわ。

 本当はあぁは言ったけど、話す予定なんてなかった。

 だけど……貴方が今日、
 あの喜多川百花が働く職場に入っていくのを確認したから。

 私……あの時、言ったわよね。

 隆雪が大切にしてるAnsyalを貶めないでって。

 隆雪の一番の親友である託実が、
 こんな時に何してるの。
 
 ふざけないでっ!!」


俺の姿を捉えた途端、実夜は冷静な口調から段々と取り乱すように
怒鳴り散らして、最後は過呼吸に近い状態で発狂していく。


そんな罵声を俺はただ黙って聞いていることしか出来なくて、
動けなくなっている俺の傍、裕兄さんが何かをしてる気配だけは感じて取れた。



「託実、貴方は此処に座りなさい。
 美加、悪いけど実夜を奥のソファーで休ませて来て」


宝珠姉が言うままに、俺の後に続いて入室していたであろう美加は
実夜を抱きかかえるように奥の部屋へと連れていき、
ゆっくりと戻ってきた。



美加が帰ってきたところで、
テーブルを取り囲むようにそれぞれのソファーに着席してるメンツ。