星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



お姉ちゃんの命日の日。
お寺の駐車場で、偶然出会った託実。


『大切な人が眠ってる』


そう紡いだ託実の言葉が、
私を現実に引き戻す。


そう託実が私を好きになるなんてない。


託実はAnsyalの託実で、
大勢のファンが存在するアーティスト。



私は……託実にとっては、
大勢のファンすぎない。



わかってたはずじゃない?



わかってて夢を見ていたはずなのに、
夢から覚めてみると……こんなにも苦しい。




9月に入り、新学期と共に唯香は病院を退院して
学校の教師として復帰する。


あの病院に通わなくて良くなったのは本当に嬉しい。


だけど唯香の傍には、
教え子の宮向井君っていう男の子が甲斐甲斐しいほどに傍に居て
私の出る幕はなし。


邪魔ものは大人しく退散しようと、
私は夜はマンションに引き籠る生活に戻る。


命日が過ぎると……いつもそう。


お姉ちゃんを忘れないために……
お姉ちゃんの気配を少しでも感じていたくて、
お姉ちゃんの絵をキャンバスに描きたくなる。



本当はもっと傍に居たかったんだよ。

お姉ちゃんの傍に居て、
もっともっといろんなこと教えて欲しいし、遊びたかった。



パソコンを起動して、
お気に入り登録している動画を追いかけていく。



本当は違法なのかもしれないけど、
それでも私の知らないお姉ちゃんの姿を見ることが出来るのは
凄く嬉しかった。


ネットサーフィンをして見つけては、お気に入り登録を繰り返し続けてきた
膨大な量のお姉ちゃんの動画。