「待って…!」
追いつかれて腕を掴まれてしまった。
「!…離して…っ…」
掴まれた手を振り払おうと
腕を振るも、離してくれない。
「ひより、話を…」
「郁ちゃんから聞く話なんてない!」
私は不意に怒鳴ってしまった。
その時、郁ちゃんの腕の力が
緩んだと思った瞬間、
私の体は郁ちゃんに抱き締められていた。
「…っ…!?」
突然の事態に、私の頭の中が
真っ白になった。
「…ごめん、ひより…」
彼の震えた声が耳に届く。
彼の言う「ごめん」は、郁ちゃんが
私と一緒に帰れなかったことに対しての
ことだった。
それはきっと、私がこんな
事態を引き起こしたからこそ、
彼がこうしなくちゃならなったから。
私が郁ちゃんを避けるような
真似をしなければ、彼が謝ることも
なかったのだ。