「野川!お前は1人でバレーしてんのかよ!!

お前1人が強くても意味ない!

お前1人が弱くても皆が繋いでくれる!

『繫ぐ』のが、バレーだろ!?」


だからそんなに無理するな、そう言うと

野川は俯き、体育館を出て行った。


少し遠くに言った野川に、大声で、鍵、

忘れんなよ!と叫ぶと、少し振り向き、

了解、と薄く聞こえた。



*


あのことがあって、あたし達の気まずさ

はなくなり、さらに近くなった気さえも

する。


まあ、あたしにとっては嬉しくもないこと、だが。



そして、ある部活の後、野川が少し小さな袋を鞄から取り出し、

「これ!クッキーです!なんとか部屋を

綺麗にして、焼いてきました!そんで押

しかけてくる女子も追い払ったし!いつ

もお世話になってます!」

と言いながら部員全員にクッキーを渡していた。

勿論あたしにも渡してきたが、野川の大

好き♡という言葉つきだ。そして勿論そ

の場であたしは野川の顔を思いっきり殴

った。


そして郁が一言。

「クッキー作るなんて……女子かよ」