わたしがこの世界に入ったきっかけは、今のお店の店長がまだ下っ端のボーイだったころにスカウトされたからだった。


断る理由も見つからなかったし、


何よりひとりぼっちのような気がして、とにかく寂しかったあの頃のわたしにはラッキーなお誘いだった。







「かんなは可愛いな。」
…お客さんが言う。


「そんなことないですよー!」
…わたしが返す。


全く同じことの繰り返しってワケではないけれど、似たようなことの繰り返しではあると思う。


お客さまのお酒を作って、一緒に飲む。


お客さまのお話を聞く。


これがわたしの本来のお仕事。


それでも、本来のお仕事以上のものを求められることの方が多い。


同伴やアフターは仕事の範囲内だとしても、店外などは仕事ではないから。