ティアは頬を伝う涙を拭って呼吸を整えると、ゲオルグに近づいていく。
手への口づけの解除効果はまだ持続しており、今のティアは子供の姿ではない。
ティアだとわかるだろうか。
だけどそれは心配に及ばなかったようだ。
ゲオルグはティアに気づくと壁から背を離し、にやりと笑った。
「逃げずに来たな、ジェンティアナ」
「……よく私だとわかりましたね」
「お前のことは調べている。まぁ…もっとも、その姿を知ったのは最近だったがな」
ゲオルグはティアの髪をひとすくいとると口づけを落とした。
「…ようやく手にいれた」
ティアはゲオルグから視線をそらし、その顔を見なかった。