ティアは短剣を持つ手をおろし、視線をわずかに下にずらした。



「…私、これでもいくつもの修羅場を切り抜けてきたんです」



「ほう?」



ティアなど恐れるには値しないとでもいいたげな声が耳に届く。



「ですから…」



ティアは短剣をすぐさま構え直すと勢いよく地面を蹴った。



「甘く見ると痛い目にあいますよ!」



ティアは上から全体重をかけて勢いよく短剣を降り下ろす。



「くっ!!」



ふいをつかれながらも男はそれを剣で受けとめた。


しかし、子供とはいえその重さの乗った短剣を受け止めるのは生易しいことではない。


男がわずかに態勢を崩したのを目のはしに捉えたティアは間髪入れずに斬りかかる。



「なめるな!!」



男の怒号が耳に入るのと同時に剣の刀身が目の前に現れ、ティアはすぐさま短剣でガードする。


防御はできたものの、勢いを殺すことはできず、ティアは滑るように地面に吹っ飛ばされた。


口に血の味を感じたが、休んでいる暇はない。


すぐに攻撃の第二波がやってくる。


力の差は歴然だとわかっているが、あきらめてしまったら本当に負けだ。


ー最後の最後まであがいてみせる。



太陽の光を鈍く反射させる剣をいなし、ティアは再び攻撃態勢に入った。