「恋遅い……って!なにそのカッコイイ髪!」
車に乗り込むなり、先に乗っていた蒼が俺の髪を見て騒ぐ。
「兄貴がやってくれた」
「何それ!?恋だけズリィ!!」
しばらく蒼がうるさかったけど、無視しておいた。
元はといえば、お前の髪やってたから自分で出来なくなったわけだし。
でも……嬉しかったな。
兄貴がくれた言葉が嬉しかった。
俺はずっと長男として、弟を守ってやんなきゃって、面倒みなきゃって思ってた。
だから、甘えようにも甘えられなかった。
本当は羨ましかったんだ。
素直に兄貴に甘えられるチビ達が。
同じ日に生まれた蒼や、ひとつしか変わらない雷と煌までもが、兄貴に甘えられているのに。
俺だけ甘えられない。