「お前は少し我慢しすぎ」





そう言って兄貴は俺の髪をいじり始めた。





「言っただろ、俺に甘えろって。気なんか使うな。恋もチビ達と同じように俺に甘えていいんだぞ?」





「な?」と、俺の頭を撫でた兄貴。





その瞬間、俺の心が温かくなった。





「ほら、出来たぞ」





鏡を見ると、さすが有名なプロ。

この短時間であっという間にセットしやがった。




兄貴にしてみれば、軽くセットしただけ。でもそこらへんにいるスタイリストからしたら、最高傑作だと上機嫌になるだろう。



髪を全体的に後ろに引っ張り、何本かのヘアピンをクロスして止めただけだけど、十分すぎるほどのセットだった。





「サンキュ、兄貴」


「おう。行ってらっしゃい」





ひらひらと手を振って見送ってくれる兄貴に、軽く手を振って車に乗り込んだ。