「メイの家庭教師をな」


「またいじめられて変更ですか」


野崎は社長に近いせいで、メイのことは顔も知らないのに熟知している。

「前回もいじめでしたよね」

「あぁ、皆メイの美しさを僻んでだな」

「社長。メイさんと言う方は、もう少し強くなるべきです」


いじめられるのは弱いから。


メイは嫌なことをされても我慢する性格だ。

朝たまたま言ったのは奇跡に近い。

不平不満がポツリと出て、それをルイが拾ったから事態は発覚したのだ。


「そうだな。メイは強くなるべきだ」


「社長が甘やかしすぎなのでは?」


「ハハッ、そうかもしれないな。ところで野崎」


「家庭教師なら知り合いが良いと言っていた文武教室が良いと思います」


野崎は話が早い。


「家庭教師はカリキュラムではなく個人にあったものを独自で考えるシステムで、それは随時保護者に報告されます。

家庭教師と学習塾両方を経営している所で、
学習塾であらかじめ経験を積んだもののみが家庭教師になることを許されているので、
人材も優秀なのが揃っています。

口コミでも大変評価が良く、ネットでも――…あっ」


野崎に子供はいない。

なのにわざわざネットで調べ、教育方針や経営なども熟知している。


それはつまり


「野崎もメイのことを考えてくれているのか」


そういうことになる。