◇◇◇


「不思議な子でしたね」


二人の部屋でそう漏らすリルに、コクコクと頷いたティン。

女の匂いがする、といそいそと出かけたリルについて行けば、まさか本当にいたとは。
ベッドのふちに座りながら、仲良く二人で会話をする。

「リルは変なとこで野次馬だよなぁ」

「まあ、ティンは気にならないんですの?あぁ…そうですか、そんなに私の話がしたいんですか」

「どうしてそー小っ恥ずかしいことに話繋げたがるんだよ…」

「ところで、あの子とルイさんの関係はなんでしょうね」

さらっと話を逸らしたリルにため息をつきながら、思案する。

「…妹…」
「監禁して、なおかつご主人さまと呼ばせますか?しかも妹がいるなんて聞いたことありません」
「…女…」
「あの初心さ。手をつけられてないように伺えます。少し性的な話をしても全く理解してませんでしたし…」


「ああー!もう、なんなんだよあの子…!」

「だから謎なんじゃないですの」

関係性の全く掴めないあの子。
一体、何のためにいるのだろうか。

「……調べて、見ましょうか」
「え?」

「あの子…多分自分でもなんでここにいるのかわかってないんだと思うんです。
役割のないのにいるのは、可哀想」

身分を名乗らなかった。
名前と、素性と。それだけ。


「人間には必ず立ち位置があります。
お節介でしょうけれど、調べてあげましょう?なかったら、本当に無意味にここにいるのならば…私たちが与えてあげることだってできますわ」


リルは、行動力が並々ならない。
一度決めたら最後までやり通す頑固者だ。


「…なんでそこまで」

そこまで気にかかるのか、と少し妬きながらティンが言うと、頭を撫でられながら優しく諭された。

「私、ああいうおどおどしてて自分に自信のない子が放っておけないんですの。小動物のような子が大好きなんです。つまらないでしょうけれど、つきあってくれますか?」


よくわからない趣味の持ち主だ、と思いながら結局は頷いてしまう。


(…まさか俺も小動物って思われてんじゃ…)


心に芽生えた疑問は、飲み込んだ。