ルイはそれから一時間半後に会社へ向かった。


メイは1日中あの部屋なので、無理に起こす必要はない。

だが、会社に行くまでの少しの時間。

これをメイに使いたいのだ。

一分一秒でも長くいたい。

だからメイを起こして一緒にいる。


無理矢理だとルイはわかっている。


もっと寝たい気持ちはわかるし、メイの我が儘ならきいてやりたい。

けれど一緒にいたい。


本当に身勝手なのだ。


「(…家庭教師か)」


見つけておかねば。

移動中の車で脳裏を霞め、早速ノートパソコンを開く。

仕事に用いるために常備しているものだが、プライベートに使っていけないわけではない。


「…社長、調べものですか」


秘書の野崎が助手席から聞いてきた。

黒髪眼鏡、ルックスよし。

まるで秘書になるために生まれてきたような女性だ。


自国であるカサンデュールの貿易関係の会社で社長をしているルイ。

色々な国にいくが、メイといたいという理由だけで、様々な国の仕事を日本に持ち込んでやる。

会長である父親も「日本好きなんだろ〜な」ぐらいなノリで黙認。

必要最低限の出張で済んでいる。


それほどまでに日本で働いているため、日本人の秘書がいてもなんら不思議ではない。

むしろこっちの方が色々と都合がよい。

本拠地であるカサンデュールにはカサンデュールの秘書もいるし、なんら問題ない。