「私、小さい頃はズボンばっかだったんですよぉ」
「…そうか」
小さい頃。
その単語に眉を歪まずルイ。
ルイはメイの小さい頃を知らないから、想像になってしまう。
メイの全てを把握していたいという我が儘で、不機嫌になる。
理由はこれだけじゃない。
「お兄ちゃんのズボンのお下がりをよく貰ってたからなんです」
(…出た)
この“お兄ちゃん”という輩。
メイはかなり好きだったらしく、よく話に出てくる。
一緒にお風呂に入っただの
一緒にご飯を食べただの
寝れない寒い夜は抱き合って眠っただの
気にくわないことこの上ない。
「め…メイは本当に“お兄ちゃん”が好きだなぁ?」
イライラしながら嫌みを言ってみる。
「はいっ!好きですっ!」
ストレートに返され、殺されかけた。
なんだ好きって、なめてんのかおら、と喧嘩口調になりたいほどイライラする。
「…“お兄ちゃん”と僕じゃあどっちが好きなんだ?」
無駄な意地を張りたくなるのはメイが好きだから。
気づいてほしい、ってか気づけ、と念じ――
「お兄ちゃんですねっ」
玉砕。
「いえ、まだご主人様とお兄ちゃんでは年月が違うというか…思いで的な…えと、あの、ごめんなさいなのですっ」
盛大に落ち込み始めたルイを慰めようと必死になるメイだった。