◇◇◇
やけに屋敷内が騒がしいような気がして、また参考書から顔を上げた。
「…またゴキでも出たんでしょうか…」
メイは、前に起こった騒動を思い出しながらひとりごちた。
おかげで勉強が少しずつ途切れてしまう。
「……」
もうやめてしまおうか。
しかし、制服が欲しいメイとしては、もう少し頑張りたいところなのだが。
「……お外か…」
もうどれくらい出てないだろうか。
旦那さまに拾ってもらって、そこからご主人さまになって…
この生活が始まってから出れなくなったのだ。
別に苦痛ではない。
ご主人さまは優しいし、安穏としているし、怖いことなど何もないのだから。
むしろ、外の方が怖い。
何があるかわからない。
そしてその何かにいい事なんか何一つもなくって、必ず自分を傷つける。
だからこの部屋で、ご主人さまと過ごす日々のなんと幸せなことか。
メイは本気でそう考えていた。
否、そう考えるだけの理由があった。
「…はぁー…ご主人さまぁ…」
会いたい。
ほんの少し、不安になったこの心を優しさで埋めて欲しい。
それは、依存というべき愛であった。