微笑ましい姉妹の光景を黙ってみていられないのが――
「野崎め……!なんでそんなにメイ心を掴んでるんだ……」
柱から恨めしそうに見ているルイである。
あほかと本心で毒づきながら、一応表ではポーカーフェイスを貫こうと――
「社長、阿呆なこと言ってないでないでさっさと荷支度を終わらせたらどうです。力仕事を私の愛しい妹にやらせるつもりですか?」
全然、しなかった。
「……野崎…」
「言っておきますが社長」
リルの青いリボンでポニーテールに結ってから、野崎は串を叩きつけた。
「あなたは私の“弟”になるのですからね。あなたの会社も辞めましたし――形勢逆転なんですよ」
「うぐ……」
野崎は会社を辞め、とある製薬会社の秘書職に就いた。
カサンデュールについて行くことは出来ないから、さっさと日本で就職したのである。
なのにこうして現れて彼とメイの面倒を見ているのは、彼女のお節介という美徳故だろう。
「野崎が姉か……なんだか妙だな」
「ふふ、私もです」
社長は憧れの人でしたから。
その言葉が表に出ることは無かったが、なんとなく雰囲気だけはルイに伝わっている。