屋敷は売り払うことに決まった。もちろんオフィスも。


日本支部の会社は最小限の形となり、向こうでの取引が主となる。

当然コックや使用人は解雇だ。


「お前はレストランで働くんだっけか。いつか行こう」


「ハハッ、本当ですね、約束ですよ!待っててください、今に個人のお店を構えて見せます」

「期待しているよ」

「シフォンケーキも置いてください!」

「はいはい、もちろん」



今日でお別れ――そんな悲しさを一切見せない明るさっぷりだった。


食事が終わって部屋へと歩いていると、高遠が廊下の端でうずくまっているのが見えた。


目を丸くしたメイがかけよると、顔面を波でぐしゃぐしゃにしていた。

「あっ……メイさまぁ……」

「高遠さん!ど、どうしたです、泣き止んでっ」

よしよしと背中を撫ぜるメイにわっと泣きつく。

「さきほどお2人が仲良くお食事されてるのを見ていたら……なみだがぁ」

「よくわかんないけど泣かないでっ」


もちろん高遠ともお別れである。


高遠はおとなしく実家に戻り、継ぎたくなかった家業を継ぐことに決めたらしい。

どうやら弟が説得したようだ。


「お二人共お幸せにぃ…私はいつでもお二人のお幸せを願ってます……うう、メイさまかわいい……」


あぐあぐと泣きわめいて、困ったようなメイを見て思わず笑いそうになったルイだった。